COLUMN
2020年5月11日
【マラソン】たった2分で怪我予防!「HRV」指標とは?
こんにちは!RUNNING SCIENCE LABの三津家です!
ランナーでいる以上、無関係ではいられないのが故障ですよね。
みなさんはこんな理由で悩んだ経験はありませんか?
・よく怪我をしてしまう…
・休むタイミングが分からない…
・慢性的に疲れている…
じつはこのような悩みの多くは、リカバリー(休養)の不足が影響していると考えられます。
今回は、その中でも多くのランナーが見落としがちな、休養の重要性、そして、身体の回復状態を客観的に把握する「HRV」指標についてお話しします。
なぜランナーに「休養」が欠かせないのか
一生懸命トレーニングしていると、「せっかくタイムも伸びてきたから休めない!」という気持ちにもなりますよね。もちろんトレーニングで負荷を与えることは、パフォーマンスは向上における一つの要因ですが、しかし、それ以上に大切なのが「練習・栄養・休養」のバランス。
どんなにハードなトレーニングをこなせたとしても休養を取って心身が回復していなければパフォーマンスは向上しません。逆に、トレーニング負荷が高すぎて、回復のバランスが取れていないランナーは走力の停滞や悪化のみならず、ケガをする可能性もあるのです。
休養を入れるタイミングと頻度――その適切なバランスを取るためには、日々のトレーニングからの「回復状態」を把握しておく必要があります。そこで今回は近年注目されている「回復状態」を示す客観的な評価基準「HRV」について詳しくご紹介します!
「HRV」指標とは?
多くのランナーは、主観的な感覚やこれまでの知識・経験によって、毎日のトレーニングを調整していると思います。しかし、主観だけで回復状態を把握することは非常に難しいもの。「HRV」指標を使えば、それが誰でも簡単に把握できます。
回復状態」を示す客観的指標「HRV」
「HRV(Heart Rate Variability)HRVとは、心臓の拍動の“ユラギ”のことを表します。心臓の拍動は、毎度規則正しく打っているわけではありません。
例えば心拍数が60bpmの、実際には1秒に1拍ではなく、0.95秒で1回、1.05秒で1回というように、微妙な差異があります。1拍1拍に“ユラギ”が生じているのです。
“ユラギ”は緊張状態など心拍数が多い状態だと少なく、逆にリラックスしている状態だと多くなります。適度にHRV高い状態でトレーニングを行うことで、競技パフォーマンスの向上やケガを防ぐことができることが明らかになっています。
【HRVが高い(ユラギが多い)場合】
副交感神経の活性度が高く、過度な疲労がない心身がリラックスした状態。
【HRVが低い(ユラギが少ない)場合】
心身に疲労がたまり自律神経が乱れた状態に。無理をすると怪我に繋がることも。
HRVの測定方法
このHRVは、スマートフォンさえあれば、「HRV4training」というアプリを用いて簡単に測定することができます。
(https://apps.apple.com/jp/app/hrv4training/id686923970)測定方法は毎朝起床後に、そのまま仰向きで寝て、スマートフォンのカメラに指を押し当て続けるだけです。このアプリは1200円でダウンロードすることができます。
心拍ベルトをお持ちの方は、「Elite HRV」というアプリ(https://apps.apple.com/jp/app/elite-hrv/id868829970)を用いて無料で測ることができます。こちらはアプリとは異なり、指を押し当てるのではなく、胸に心拍ベルトを巻いて測定する方式です。
「HRV」の活用で多いのは、起床後すぐの測定。自身の疲労状態を確認し、その疲労状態によって当日のトレーニングの負荷を調整することが可能です。
例えば、疲労度が高い状態であれば、インターバルのペースや本数を減らす、jogのペースを遅くする、インターバルのようなポイント練習を延期するといったようにします。疲労度が低い状態であれば、予定通りのトレーニングを実施する、インターバルの本数を増やす、jogのペースを速くするといったようにします。
このようにトレーニングの負荷を自分の疲労状態に合わせて調整することで、適切な負荷をかけることができ、よりパフォーマンスの向上が見込まれます。さらにはオーバートレーニングやケガのリスクを回避することも期待されます。
HRVの活用例
【疲労度が低い状態】
・予定通りのトレーニング
・インターバルの本数を増やす
・jogのペースを速くする
【疲労度が高い状態】
・インターバルの本数を減らす
・休養にする
・jogのペースを遅くする
まとめ
今回は自分の疲労、回復状態の指標の1つとなるHRVを紹介しました。やみくもにトレーニングを行ってもパフォーマンスは高まるとは限りません。ぜひ自分の身体の状態に耳を傾けながらトレーニングを行い、効率よくパフォーマンスの向上を図りましょう!
参考文献
・Takaya Mitsuka, Fuminori Takayama, Yoshiharu Nabekura. Fine-tuning training strategy based on heart rate variability: A case study of a middle-distance runner. Sports Performance and Science Reports. 2019